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メンタリングのトラブル対応 コミュニケーションで解決・予防する勘所

Tags: メンタリング, トラブル対応, コミュニケーション, 人材開発, プログラム運営

メンターシッププログラムの運営において、参加者間の関係性が常に円滑に進むとは限りません。時に誤解やすれ違いからトラブルが発生し、プログラムの効果を損なうリスクが生じます。人材開発担当者としては、こうしたトラブルを未然に防ぎ、あるいは発生時に適切に対処するための準備が求められます。特に、メンターとメンティー間のコミュニケーションは、トラブルの予防、早期発見、そして解決において極めて重要な役割を果たします。

本稿では、メンタリングプログラムにおける主なトラブルの様相を概観しつつ、コミュニケーションの観点から、それらを未然に防ぐ方法、早期に兆候を察知する方法、そして発生してしまった場合の具体的な対応策について解説します。

メンタリングで起こりうる主なトラブルとその背景

メンタリング関係におけるトラブルは多岐にわたりますが、その根底にはコミュニケーションの不備や期待値のずれが存在することが少なくありません。具体的なトラブルの種類としては以下が挙げられます。

これらのトラブルは、参加者のエンゲージメント低下を招くだけでなく、プログラム全体の信頼性にも影響を及ぼします。

コミュニケーションによるトラブルの未然防止策

トラブルを発生させないための最も効果的な手段の一つが、プログラム設計段階からコミュニケーションの重要性を強調し、参加者に必要なスキルとマインドセットを身につけてもらうことです。

1. 事前の期待値調整と役割の明確化

2. 信頼関係構築と心理的安全性の醸成

3. オープンな対話と定期的なチェックイン

トラブルの早期発見のためのコミュニケーション

トラブルは突然発生するのではなく、多くの場合、関係性の悪化やコミュニケーションの質の低下といった兆候が見られます。これらの兆候を早期に察知することが、深刻なトラブルを防ぐ鍵となります。

これらの兆候を察知するために、プログラム運営担当者は、単に参加者からの報告を待つだけでなく、定期的な軽微なチェックイン(短いアンケート、カジュアルな声かけなど)や、メンター・メンティーが集まる機会(全体研修など)での様子観察を通じて、積極的に状況を把握しようと努める姿勢が重要です。

もし兆候が見られた場合は、「最近何かお困りのことはありますか」「〇〇さんとのメンタリングの進捗はいかがですか」といった、相手にプレッシャーを与えすぎない形で、率直に状況を尋ねるコミュニケーションを試みます。

トラブル発生時のコミュニケーション対応

実際にトラブルが発生してしまった場合、迅速かつ適切に対応することが、関係性の修復あるいは損害の最小化につながります。

1. 状況の丁寧な聞き取り

トラブルの報告を受けた際は、まず報告者(メンターまたはメンティー)から、落ち着いて状況を詳細に聞き取ります。その後、もう一方の参加者からも同様に、状況、感じていること、今後の希望などを聞き取ります。この際、どちらかの肩を持つことなく、中立的な立場で事実関係と双方の認識を丁寧に確認することが重要です。

2. 中立的な立場での介入・仲介

当事者間での解決が難しい場合は、プログラム運営担当者が第三者として介入し、対話の仲介を行います。双方が冷静に話し合える場を設定し、感情的にならずに論点を整理できるようファシリテーションを行います。この際、非難や決めつけを避け、お互いの立場や背景を理解しようとする姿勢を促すコミュニケーションが有効です。

3. 解決策の検討と合意形成

聞き取りや仲介を通じて、トラブルの原因や状況が明らかになったら、具体的な解決策を検討します。これは、誤解の解消、謝罪、今後の関わり方の見直し、第三者機関(社内外の相談窓口など)の活用、あるいは関係性の解消といった選択肢を含みます。重要なのは、当事者双方が納得できる形での合意形成を目指すことです。担当者は、一方に不利益が生じすぎないよう配慮しつつ、合意に向けたコミュニケーションをサポートします。

4. 関係性の再構築または終了

合意に基づき、関係性を継続する場合は、改めて期待値のすり合わせや、コミュニケーションルールの確認を行います。関係性の継続が困難と判断された場合は、プログラムとして関係を終了させる手続きを取ります。いずれの場合も、その後のフォローアップについて具体的に説明し、参加者が孤立しないよう配慮することが重要です。

プログラム運営担当者からの継続的なサポート

メンター・メンティーが自信を持って活動し、万が一の事態にも適切に対応できるよう、プログラム運営担当者からの継続的なサポートは不可欠です。

結論

メンタリングプログラムにおけるトラブルは避けられない可能性のある課題ですが、コミュニケーションを軸とした予防、早期発見、そして適切な対応によって、その影響を最小限に抑えることが可能です。プログラム運営担当者は、これらのコミュニケーション戦略をプログラム設計や研修内容に組み込み、参加者が安心して、効果的にメンタリングに取り組める環境を整備することが求められます。本稿で述べた「勘所」が、貴社のメンターシッププログラム運営の一助となれば幸いです。