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メンタリングにおけるレジリエンス向上支援 コミュニケーションの勘所

Tags: メンタリング, レジリエンス, コミュニケーション, 人材育成, 人材開発プログラム

はじめに:変化の時代に求められるレジリエンスとメンタリングの役割

現代のビジネス環境は、予測困難な変化に満ちています。このような状況下で、組織と個人が持続的に成長していくためには、「レジリエンス(Resilience)」、すなわち困難や逆境に直面しても、しなやかに適応し回復する力が極めて重要となっています。企業における人材開発担当者の皆様は、従業員のレジリエンスを高めることが、組織全体の強靭性やパフォーマンス向上に繋がる重要な課題であると認識されていることでしょう。

従業員のレジリエンス向上を支援する取り組みとして、メンターシッププログラムは非常に有効な手段となり得ます。メンターとの対話を通じて、メンティーは自身の強みや弱みを理解し、課題に立ち向かうための新たな視点や解決策を見出すことができます。しかし、単にメンターとメンティーを組み合わせるだけでは、レジリエンス向上に繋がる深い関わりは生まれません。レジリエンス支援を効果的に行うためには、意図的かつ具体的なコミュニケーション設計とメンターのスキル向上が不可欠です。

この記事では、メンターシッププログラムを通じてメンティーのレジリエンス向上を支援するためのコミュニケーションの勘所について、具体的な手法や考え方を解説いたします。

レジリエンスとは何か:メンタリングで焦点を当てるべき要素

レジリエンスは単なる精神的な強さではなく、様々な要因が複合的に影響し合う動的なプロセスです。心理学的な研究によれば、レジリエンスは主に以下の要素によって構成されると考えられています。

メンタリングにおいては、これらの要素全てに直接働きかけることができる可能性があります。メンターとの対話を通じて自己認識を深めたり、成功体験を共有して自己効力感を高めたり、困難な状況への対処法を一緒に考えることで問題解決能力を養ったりすることが期待できます。

レジリエンス向上を促すメンタリングコミュニケーションの具体的な手法

メンターがメンティーのレジリエンスを効果的に支援するためには、以下のようなコミュニケーション手法を意識することが重要です。

1. 心理的安全性の確保と信頼関係の構築

レジリエンス支援の出発点は、メンティーが安心して自身の弱さや失敗、困難を正直に話せる環境を作ることです。メンターは、メンティーの話を批判せず、ありのままを受け入れる姿勢を示す必要があります。

2. 内省の促進と学びの引き出し

困難な状況からレジリエンスを発揮するためには、その経験を振り返り、そこから学びを得るプロセスが不可欠です。メンターは、メンティーの内省を促す問いかけを行います。

3. 強みやリソースの再認識

困難に立ち向かう力は、メンティー自身が持っている強みや周囲のリソース(人的支援、知識、スキルなど)を認識することから生まれます。

4. 視点転換の支援

困難な状況に囚われている時、人は視野が狭まりがちです。メンターは、メンティーが状況を異なる角度から捉え直せるよう支援します。

5. 目標設定と行動計画への落とし込み

レジリエンスは、漠然とした「頑張ろう」という気持ちだけでなく、具体的な行動に繋がることが重要です。メンターは、メンティーが困難を乗り越えるための具体的な目標を設定し、そこに至るまでの行動計画を立てるのを支援します。

6. 適切なフィードバック

メンターからのフィードバックは、メンティーの自己認識と成長を促す重要な要素です。特に、レジリエンス向上においては、肯定的なフィードバックと建設的なフィードバックのバランスが重要となります。

プログラム運営担当者が考慮すべき点

メンタリングプログラム全体としてレジリエンス向上を支援するためには、人材開発担当者の方々が以下の点を考慮する必要があります。

結論:レジリエンスは育むもの、メンタリングはその強力な支援ツール

レジリエンスは生まれ持った才能ではなく、経験や学びを通じて育むことができる能力です。メンターシップは、安全な環境での対話と、メンターからの適切なコミュニケーションを通じて、メンティーが自身の内面と向き合い、困難を乗り越える力を培うための強力なツールとなり得ます。

人材開発担当者の皆様には、本記事で解説した具体的なコミュニケーション手法やプログラム設計上のポイントを参考に、メンターシッププログラムを通じて従業員のレジリエンス向上を積極的に支援していただきたく存じます。それが、変化に強く、持続的に成長できる組織文化の醸成に繋がるものと確信しております。