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メンタリング学びの実践促進 コミュニケーションの勘所

Tags: メンタリング, コミュニケーション, 実践促進, 行動変容, 人材育成, メンターシッププログラム

メンタリングにおける学びの実践を阻む要因

メンタリングプログラムの効果は、メンターとメンティーのセッション中の対話だけでなく、そこで得られた学びや気づきが、メンティーの実際の職場での行動や成果にどれだけ結びついているかによって大きく左右されます。しかしながら、熱心な対話が行われても、その学びが日常の業務に活かされず、行動変容に繋がりにくいといった課題に直面するケースも少なくありません。

学びが実践に繋がりにくい要因としては、以下のような点が考えられます。

これらの課題を克服し、メンタリングでの学びを職場での実践に確実に繋げるためには、セッション中のコミュニケーションに加え、セッション外でのフォローアップを含む継続的なコミュニケーションが極めて重要になります。

実践促進のためのコミュニケーションの基本姿勢

学びの実践を促すコミュニケーションにおいて、メンターに求められる基本姿勢は、単なる指示やアドバイスではなく、メンティーが自ら考え、行動し、振り返るプロセスを伴走し、サポートすることです。一方的な「〜しなさい」ではなく、「〜について、どう考えていますか?」「具体的にどのような行動が考えられますか?」「それを実行するために、何から始められそうですか?」といった問いかけを通じて、メンティーの内発的な動機と主体性を引き出すことが鍵となります。

また、実践は常に成功するとは限りません。失敗や困難に直面した際に、非難するのではなく、学びとして捉え、次に繋げるための建設的な対話を行う心理的安全性を提供することも不可欠です。

学びの実践を促す具体的なコミュニケーションステップ

メンタリングにおける学びの実践促進は、セッション中の対話とセッション間のフォローアップを連携させることで効果が高まります。具体的なコミュニケーションのステップとそれぞれの勘所を以下に示します。

1. 目標設定段階における「実践可能な目標」のすり合わせ

最初の目標設定段階で、メンティーの成長目標が抽象的ではなく、具体的な行動目標として設定されているかを確認します。

2. セッション中における「学びの具体化と行動への接続」

セッションでの対話を通じて得られた学びや気づきを、どのように職場での具体的な行動に繋げるかを話し合います。

3. セッション間における「実践のフォローアップと障壁への対処」

次回のセッションまでの間に、メンティーが特定した行動を実行できるよう、必要に応じてフォローアップのコミュニケーションを行います。

4. 実践後のセッションにおける「振り返りと次への接続」

実践した結果をセッションで詳細に振り返り、そこから新たな学びを得て、次の行動に繋げます。

組織・上司との連携による実践サポート

メンティーの職場での実践には、本人の努力に加え、周囲の理解や協力が必要となる場合があります。メンターは、メンティーの同意を得た上で、必要に応じて人材開発担当者やメンティーの上司と連携し、実践しやすい環境を整えるサポートを検討することが有効です。

まとめ

メンタリングで得た学びを職場での具体的な実践に繋げることは、プログラムの効果を最大化し、メンティーの成長を加速させる上で不可欠な要素です。そのためには、目標設定からセッション中の対話、セッション間のフォローアップ、そして振り返りまで、一貫して「実践」を意識したコミュニケーション設計が重要になります。

人材開発担当者の皆様においては、メンター研修において、単なる傾聴や問いかけといった基本的なコミュニケーションスキルに加え、メンティーの学びを具体的な行動に落とし込み、職場での実践を継続的にサポートするためのコミュニケーション技法を組み込むことを推奨いたします。また、メンター・メンティー・上司・HR担当者が連携し、メンティーの実践を組織として後押しする仕組み作りも、プログラム全体の成功に繋がる重要な取り組みとなるでしょう。

効果的なコミュニケーションを通じて、メンタリングが単なる「良い話」に留まらず、確かな「成長と成果」に結びつくよう、本記事が皆様のプログラム運営の一助となれば幸いです。