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メンタリング効果測定を成功させる コミュニケーションの勘所

Tags: メンタリング, 効果測定, コミュニケーション, 人材開発, メンタリングプログラム

はじめに

企業におけるメンターシッププログラムの効果を最大化するためには、その効果を適切に測定し、評価することが不可欠です。しかし、メンタリングの効果測定は、定量的な成果だけでなく、参加者の内面的な変化や非公式な関係性の質など、測定が難しい要素も多く含まれるため、その手法に課題を感じている人材開発担当者の方も少なくありません。

本稿では、メンタリングの効果測定において、特にコミュニケーションが果たす重要な役割に焦点を当てます。効果測定のプロセス全体を通じて、メンターとメンティー、そしてプログラム運営側の間の効果的なコミュニケーションがいかに測定の精度を高め、プログラムの改善につなげる鍵となるかについて解説します。

メンタリング効果測定におけるコミュニケーションの重要性

メンタリングの効果は多岐にわたります。メンティーのスキル向上、目標達成、エンゲージメント向上、キャリア発展だけでなく、メンター自身の成長、組織全体の知識移転や文化醸成なども含まれます。これらの多様な効果を捉えるためには、単に事後アンケートを実施するだけでは不十分な場合があります。

ここでコミュニケーションが重要となります。効果測定は、単にデータを収集する行為ではなく、関係者間で「何をもって成功とするか」「どのような変化を目指すか」を共有し、その進捗や結果について対話し、次の行動につなげる一連のプロセスです。このプロセスにおいて、効果的なコミュニケーションは以下のような役割を果たします。

  1. 測定指標の合意形成: メンターとメンティーが、セッション開始前に「何を達成目標とし、その達成をどのように測るか」を具体的に話し合い、共通認識を持つことで、後々の効果測定がブレなく、かつ当事者にとって意味のあるものになります。
  2. 定性情報の収集精度向上: 定量的なデータだけでは捉えきれないメンティーの気づきやメンターの経験知、関係性の質といった情報は、対話を通じてこそ引き出されます。
  3. 測定結果の正確な理解と受容: 測定結果が出た際に、その数値や記述が何を意味するのか、なぜそのような結果になったのかをメンターとメンティーが共に考察し、理解を深めることが、結果を前向きに受け止め、今後の行動につなげるために重要です。
  4. プログラムへのフィードバック促進: 効果測定の結果やプロセスに関する参加者の声(成功要因、課題、改善提案など)を運営側に効果的に伝えることで、プログラム自体の継続的な改善に役立てることができます。

効果測定を成功させるコミュニケーションのステップ

メンタリングの効果測定を成功させるためのコミュニケーションは、プログラムの開始前から終了後まで、継続的に行う必要があります。ここでは、その主なステップにおけるコミュニケーションの勘所を解説します。

ステップ1: プログラム開始前 - 期待値と目標のすり合わせ

メンターシッププログラムの開始に先立ち、メンターとメンティー、そして運営側の間で、プログラム全体および個別のメンタリング関係に対する期待値をすり合わせることが重要です。特に効果測定の観点からは、以下の点について具体的にコミュニケーションを取ることが推奨されます。

ステップ2: メンタリングセッション中 - 進捗の確認と定性情報の収集

メンタリングセッションそのものが、最も重要なコミュニケーションの場です。この中で、目標に対する進捗を確認し、定性的な効果情報を収集します。

ステップ3: プログラム終了後 - 総合的な評価とフィードバック

プログラム終了後に行われる効果測定は、プログラム全体および個々のメンタリング関係の成果を総合的に評価し、今後の改善につなげるための重要な機会です。

効果測定を妨げるコミュニケーションの課題とその対応

効果測定におけるコミュニケーションは常に円滑に進むとは限りません。よく見られる課題と、それに対する対応策を以下に示します。

結論

メンタリングの効果測定は、単に数値や報告書を作成するプロセスではなく、関係者間の継続的なコミュニケーションを通じて、メンタリングの価値を可視化し、その実践を改善していくための活動です。目標設定における共通認識の形成、セッション中の深い対話、そして結果の適切なフィードバックといった各段階での効果的なコミュニケーションが、測定の精度と、そこから得られる示唆の質を大きく左右します。

人材開発担当者の皆様には、効果測定の手法設計に加えて、そのプロセス全体におけるコミュニケーション設計に注力していただくことを推奨いたします。メンター、メンティー、そして運営側が互いにオープンかつ建設的に対話できる環境を整備することが、メンターシッププログラムの効果を最大限に引き出し、組織全体の成長に貢献するための重要な一歩となるでしょう。

本稿が、皆様のメンターシッププログラムの効果測定とコミュニケーション改善の一助となれば幸いです。