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メンタリング契約・合意形成 コミュニケーション設計の勘所

Tags: メンタリング, 合意形成, コミュニケーション, プログラム設計, 人材開発

はじめに

企業におけるメンターシッププログラムは、若手育成、社内エンゲージメント向上、組織文化の醸成など、多岐にわたる効果が期待されています。このプログラムの成功において、メンターとメンティーの関係性の基盤となる「契約・合意形成」のプロセスは極めて重要です。プログラム開始初期段階における両者の期待値調整と共通理解の醸成は、その後のセッションの質や継続性に大きく影響します。

本記事では、人材開発担当者の皆様がメンターシッププログラムを設計・運営される際に、メンターとメンティーが効果的な契約・合意形成を行うためのコミュニケーションの勘所について解説します。

メンタリングにおける契約・合意形成の重要性

メンタリングにおける「契約」とは、法的な拘束力を持つものではなく、メンターとメンティーがお互いの役割、期待、活動内容、ルールなどについて認識を共有し、共通の理解とコミットメントを築くためのプロセスを指します。この合意形成がなぜ重要なのでしょうか。

  1. 期待値のズレ防止: メンターとメンティーがそれぞれ抱くプログラムへの期待や自身の役割に対する認識は、往々にして異なります。初期段階でこれらの期待を明確にし、調整することで、後々のミスマッチや不満を防ぐことができます。
  2. 目標設定の明確化: メンタリングを通じて何を達成したいのか、具体的な目標を合意することで、セッションの方向性が定まり、より効果的な活動が可能となります。
  3. 役割と責任の明確化: メンターはどのようなサポートを提供し、メンティーはどのように主体的に関わるべきか、といった役割や責任を明確にすることで、主体的な参加を促します。
  4. 関係性の基盤構築: オープンで誠実なコミュニケーションを通じて合意を形成するプロセス自体が、メンターとメンティーの間に信頼関係を築く第一歩となります。
  5. 活動の促進と継続: 合意された目標やルールがあることで、両者は安心して活動に取り組むことができ、プログラムの継続性が高まります。

これらの点から、契約・合意形成はメンタリングプログラムの効果を最大化するための不可欠なステップと言えます。

合意形成のためのコミュニケーション設計のポイント

人材開発担当者は、この重要なプロセスが円滑に進むよう、プログラム設計の段階からコミュニケーションを意識する必要があります。

1. プログラム全体における合意形成の位置づけ

2. 合意すべき具体的なコミュニケーション項目

メンターとメンティーが初回セッションなどで話し合い、合意すべき項目例を以下に示します。これらの項目について話し合う機会を設けるよう促してください。

3. 合意形成を促進する具体的なコミュニケーション術(メンター・メンティー向け)

これらの項目について話し合う際に、メンターとメンティーが効果的にコミュニケーションを取るためのスキルも重要です。人材開発担当者は、メンター研修などでこれらのスキル習得を支援することが望ましいです。

4. よくある課題への対処法

結論

メンタリングプログラムの成功は、メンターとメンティーがプログラム開始時に効果的にコミュニケーションを取り、共通の理解に基づいた「契約・合意形成」ができるかに大きく依存します。人材開発担当者は、オリエンテーションやガイドライン提供を通じてこのプロセスの重要性を伝え、メンター・メンティーが安心して話し合い、相互の期待を調整し、具体的な計画を立てられるよう支援することが求められます。

丁寧な合意形成は、その後のメンタリングセッションにおける信頼関係の構築、目標達成に向けた主体的な行動、そしてプログラム全体のエンゲージメント向上に繋がります。ぜひ、貴社のメンターシッププログラムにおいて、この契約・合意形成のステップを丁寧に設計・実行されることをお勧めいたします。