次世代メンタリングナビ

メンティーのモチベーション低下時 メンタリングコミュニケーションの勘所

Tags: メンタリング, コミュニケーション, モチベーション低下, 人材育成, メンターシッププログラム, リカバリーコミュニケーション

はじめに

メンターシッププログラムを運営される中で、メンティーのモチベーションが低下している、あるいはセッションが停滞しているといった状況に直面することは少なくないかもしれません。メンティーのエンゲージメント低下は、プログラム全体の効果を損なうだけでなく、メンター・メンティー双方にとってネガティブな体験となり得ます。このような状況下で、どのようにコミュニケーションを取り、関係性を立て直し、メンティーの成長を再び後押しできるか。本記事では、メンティーのモチベーション低下や停滞が見られる際に有効なメンタリングコミュニケーションの具体的な手法と、人材開発担当者として講じるべきサポートについて解説します。

メンティーのモチベーション低下や停滞の兆候と原因理解

まず、メンティーのモチベーション低下やセッションの停滞に早期に気づくことが重要です。以下のような兆候が見られた場合、注意が必要です。

これらの兆候に気づいたら、次にその背景にある原因を探る必要があります。原因は多岐にわたりますが、以下のような可能性が考えられます。

原因を正確に理解するためには、推測ではなく、メンティーとのコミュニケーションを通じて情報を収集することが不可欠です。

モチベーション低下時のコミュニケーション実践のポイント

メンティーのモチベーション低下や停滞を感じた際に、メンターが意識すべきコミュニケーションのポイントは以下の通りです。

1. 変化への気づきと開かれた対話の機会設定

まずはメンティーの変化に気づいていることを、非難するのではなく、懸念や気遣いとして伝えます。「最近少し元気がないように見えるけれど、何か業務で大変なことはありますか」「前回のセッションから少し様子が違うように感じたのですが、何か変化がありましたか」のように、具体的な変化に言及し、メンティーが安心して話せる雰囲気を作ることが大切です。そして、「もしよかったら、少し時間を取って話を聞かせてもらえませんか」と、改めて対話の機会を設定することを提案します。

2. 傾聴と共感による安心感の醸成

メンティーが話し始めたら、まずは徹底的に傾聴します。遮らず、評価せず、ただ耳を傾ける姿勢を示します。相槌や頷きを適切に使い、話の内容を理解しようと努めます。メンティーの感情に寄り添う共感的な姿勢が重要です。「それは大変でしたね」「そう感じるのも無理はありません」といった共感のメッセージを伝えることで、メンティーは自分の気持ちや状況が受け止められていると感じ、安心感を抱きやすくなります。

3. 原因特定のための問いかけ

傾聴を通じて、メンティーが抱える問題や感情の輪郭が見えてきたら、原因を特定するための問いかけを行います。「具体的にどのような点に難しさを感じていますか」「その状況は、メンタリングで話している目標にどのような影響を与えていますか」「もし可能であれば、もう少し詳しく教えてもらえませんか」のように、メンティー自身が状況を整理し、根本原因に気づくことを促すような質問が有効です。ただし、尋問のようにならないよう、あくまでサポートの姿勢で臨みます。

4. 期待値の再調整と目標の見直し

原因が特定できたら、現在の状況を踏まえ、メンタリングに対する期待値や設定している目標についてメンティーと話し合います。現実的に達成が難しい状況であれば、目標を一時的に下方修正したり、別の側面に焦点を当てたりすることも選択肢に入ります。「今の状況では、当初の目標達成は少し難しいかもしれないね。何か別の、今のあなたにとって優先すべきことや、メンタリングでサポートできることはありますか」「一旦、大きな目標は置いておいて、まずは今の状況を乗り越えるためにメンタリングで取り組めることを考えてみましょうか」のように、柔軟な姿勢を示します。

5. ポジティブな側面への焦点と自己肯定感のサポート

モチベーションが低下しているメンティーは、自分の現状をネガティブに捉えがちです。メンターは、メンティーがこれまでに達成してきたことや、持つ強み、成長の可能性に焦点を当てるコミュニケーションを心がけます。「〇〇さんは以前、このような困難を乗り越えましたね」「〇〇さんの強みである△△を活かせば、この状況もきっと乗り越えられますよ」「たとえ小さな一歩でも、△△を試してみたことは素晴らしいです」のように、具体的な事実やメンティーのポジティブな側面に言及することで、自己肯定感の回復をサポートします。

6. リソースの活用と具体的な行動計画の検討

メンティーが抱える課題に対して、一人で抱え込まず、周囲のリソースを活用することを促します。例えば、業務上の問題であれば上司や同僚への相談、個人的な問題であれば社内外の相談窓口の利用などを提案します。そして、メンタリングを通じて何に取り組むのか、具体的な行動計画をメンティーと一緒に検討します。大きな一歩ではなく、小さな、実行可能なステップを設定することが、再び動き出すきっかけとなります。

人材開発担当者によるサポートの重要性

メンティーのモチベーション低下や停滞への対応は、メンターに全てを委ねるのではなく、人材開発担当者による適切なサポートが不可欠です。

まとめ

メンタリングにおけるメンティーのモチベーション低下や停滞は避けられない課題ですが、これを乗り越えるための適切なコミュニケーションは存在します。早期の兆候把握、傾聴と共感、原因の深掘り、期待値や目標の柔軟な見直し、ポジティブな側面に焦点を当てる姿勢、そして具体的な行動計画のサポート。これらのコミュニケーション実践を通じて、メンターはメンティーが再び前向きにメンタリングに取り組み、成長の軌道に戻ることを支援できます。

そして、このプロセスを効果的に進めるためには、人材開発担当者によるメンターへの教育・サポート、相談体制の整備が不可欠です。組織としてメンターシッププログラム参加者を包括的にサポートする体制を構築することが、メンタリングの効果を最大化し、参加者の成長を促進する鍵となります。